この4月、泉南市のマーブルビーチに、「恋人の聖地」魅力創出事業として、ハート型のモニュメントが設置された。絶妙な色合いのモニュメントで、白い大理石のビーチに映える。苦心の色らしいが、平面的なレッドでないのがいい。光沢はあるが深みもあり、ピンクにもレッドにもとれる色が、曖昧で複雑、それでいて甘やかな恋模様を表現しているようで、大人が見ていても楽しくなる。

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 そのハートには、ラフな筆記体のフォントで「Sennan Marble Beach」(せんなんマーブルビーチ)の文字と、対岸の関空島から飛び立つ飛行機をイメージした飛行機雲と飛行機のシルエットが白い浮彫になっている。ここを訪れるカップルなら、このイメージに、いつかふたりで旅立つ日の光景を重ねるのではないだろうか。

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 その下には、「always with you」(いつもあなたと)と書かれている。大切な恋人と、家族と、友人と、いつまでも一緒にいれますように、と願いを込めて訪れる場所に、というのが製作者の意図だろう。

 折しも、巷では、まちなかにあるハート型のものを訪ねて写真を撮るのが流行っているらしい。幸い、マーブルビーチのハートは、「インスタ映え」すると好評で、SNSには写真が次々とアップされている。大きなオブジェがそそり立つのではなく、白いビーチを見下ろして初めて、あっと気づくのがまた楽しいらしく、若い世代やカップルだけでなく、ふらりと立ち寄った移動中の旅行者や、お子さん連れの家族、愛犬との写真などいろいろとアップされており、あらたな泉南市の人気スポットとなりそうだ。

 マーブルビーチは、大阪府ではじめて「恋人の聖地」に認定されたスポットだ。陽差しの強い夏の日中には、空と海の抜けるような青にビーチの白のコントラストが美しく、夕刻には、日本の「夕陽百選」に選ばれた夕陽が西の空を朱に染める。それを知ってか知らずか、夕陽を背にハートモニュメントを撮った写真も幾つかアップされている。

 ここを訪れたひとたちに、これを機に泉南市の他のスポットも知ってもらえるといいのだが。「恋人の聖地」プロジェクト公式サイトのPC版では、マーブルビーチ」のページにデートコースとして泉南市の近隣スポットも紹介されている。今の時季なら、やはり泉南市農業公園「花咲きファーム」内にある「デビッド・オースチン・イングリッシュローズガーデン」がおすすめだろう。ちょうど同社のローズコレクション3000本が咲きそろう「春のローズフェスティバル」の真っ最中だ。

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 ばらの花言葉は「愛」だそうだが、108本は「プロポーズ」を、1本でも「あなたが運命のひと」を意味するらしい。近年同社で開発された品種はどんどん育てやすくなっているそうなので、訪れた記念に鉢苗を買って育てたり、ギフトショップで英国直輸入の可愛いローズグッズのプレゼントを捜すのも楽しそうだ。

 また、英国を本国とし、「イングリッシュローズ」の生みの親である同社のコレクションは、英国史や英国文学の名作のヒロインやヒーローなどの名を冠した品種が多い。恋の情熱と立ち昇るばらの香気とはよくあう。歴史上、文学史上に残る恋物語のヒーロー、ヒロインの名のばらも多く、ガーデン内に咲き乱れる品種の数だけ恋物語があるようだ。

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 これは、シェイクスピアの戯曲「オセロ」のヒロイン「デスデモーナ」。清楚な白いばらだ。ヴェネツィア貴族の令嬢で親の反対を押し切ってムーア人の軍人オセロと結婚する。ひたむきに夫を愛したデスデモーナのイメージそのものだ。

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 今年の新品種、「エミリー・ブロンテ」。いわずと知れた小説「嵐が丘」の作者だ。激しい愛憎の物語は、幾度か映画や舞台になっている。

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 その「嵐が丘」のヒーロー「ヒースクリフ」の名のばら。その名のとおり情熱的な赤だ。

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 これは「レディ・エマ・ハミルトン」。トラファルガー海戦等で知られるイギリスの英雄、隻眼隻腕のネルソン提督の恋人。貧しい生まれから社交界の花形になった。ネルソン提督との恋は、「風と共に去りぬ」の女優ヴィヴィアン・リーが同じく主演し、こちらも邦題「美女ありき」という映画になっている。

 ほかにも恋物語がひそむばらはいくつもある。ハート・モニュメント完成を機に、長い歴史を持つ泉南市にも語り継がれているような物語が何かないかと捜してみたのだが、残念ながらみつけられなかった。だが、史上に名を残さずとも、市井の人々も様々な物語を生きてきたのであろう事は改めて言うまでもない。ハッピィエンドばかりではないだろうが、”過ぎてしまえば、重ねてきた恋の涙も喜びも人生の彩り”、などと早々と悟ることもない。

 いまは、隣の大切な人とのかけがえのない時間が長く続きますようにと願いながら、幸せをかみしめて、#alwayswithyou と呟いてくれたらと思う。そんな願いを込めて人々が訪れ笑顔で写真を撮っていく場所が泉南市にある。そう考えるだけでこちらも自然と笑みがこぼれる。

 このコラムがアップされる頃は、ローズガーデンの早咲きのばらはもう一番の見頃を過ぎているだろうか。初夏が近づけば、今度は紫陽花の季節となり、泉南市の紫陽花の名所「紫陽花寺・長慶寺」にもハート型の紫陽花が毎年咲く。ぜひみつけてみてほしい。こちらは、結婚の記念写真の撮影場所としても人気だ。豪華な打掛・羽織袴のカップルに出会えるかも知れませんよ。

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長慶寺のハートの紫陽花

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ローズガーデンのハート模様の鯉。隠れた人気者だ。

(文・写真 T.A.)

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