Vol.6 熱き秋の2日間
鬱陶しい季節からようやく開放され、秋風が泉南市内でも感じられるようになった。そんな秋風に乗ってどこからともなく太鼓と笛の音が聞こえ始めると、泉南市に秋祭り“やぐら”の季節がやってくる。曳き手達の太鼓や笛の練習の音がやぐらの最終準備に入ったことを意味する。開催日は10月三連休のうち最初の2日間が本番となり、1年間準備してきた曳き手達が最も興奮に達する日なのだ。
やぐらは、江戸時代後半から秋の豊作を祝って始められたのが起源と言われる。やぐらと言っても火の見櫓や盆踊りの櫓とは違う。いわゆる山車(だし)の一種で、全国区で有名な岸和田の“だんじり”は4輪のコマで走行するが、泉南市で見られる山車は牛車のように2輪のコマで走行する。やぐらは泉南市内の各地区で見られるが、中でも大きいものは樽井地区で曳行(えいこう)される4台のやぐらだ。高さ約5メートル、全長約10メートルで、やぐら後方に据え付けられている太鼓は直径約1メートルにもなる。また各やぐらにはそれぞれ異なる彫物が施されている。
朝から夜まで曳き手達は太鼓を叩き、笛を吹き、音頭を歌いながら地区内を練り歩く。一見優雅に曳行しているように見えるが、一番の見せ場が交差点で行われる“まわせ”だ。大きなやぐらの片方のコマを支点にしてやぐらを360度、数回まわすのだ。曳き手達の「まわせ、まわせ」の掛け声でまわり始め、瞬く間に全長約10メートルのやぐらが勢い付くパフォーマンスには圧巻だ。
樽井地区では、やぐらは2日目に茅渟(ちぬ)神社に宮入する。その後、樽井の海辺まで4台のやぐら、神輿、お稚児さんと列を組んで行列のする渡御の形態は、大阪唯一だ。
夕暮れから提灯が灯った夜の祭りもお勧めだ。夜はひと味違ったやぐらを目にすることができる。南海・樽井駅すぐの銀行前の交差点では提灯の灯りが綺麗な4台のやぐらが集結し、祭りのクライマックスを迎える。決して広くはない交差点で4台のやぐらが代わる代わるまわせをし、その迫力で観客を魅了する。曳き手達の興奮と熱気が感じられるので、見逃したくはないポイントだ。
泉南市では2016年10月2日(日)に各地域のやぐらが一同に揃う泉南フェスタが開催され、翌週の本番を前に市内のやぐらが泉南市役所前に集まる。大きさや彫物が違ったやぐらを一同に見るチャンスでもある。(注意:本文は2016年度のコラムであり、近年泉南フェスタは開催されていません。例年、秋祭りは、各地区ごとに催行されます。ご了承ください)
熱い2日間まで、あと数日だ。
(文・写真 河村直樹)