信達市場地区に市場稲荷神社があります。市場地区に住む人からは「市場の宮さん」の愛称で親しまれています。
市場稲荷の前を通った時に、以前に父が「市場の宮さんは伊勢神宮から勧請された神社なんやで」という言葉をふと思い出しました。その当時の私はあまり興味がなく聞き流していたのですが、気になって調べてみることしました。
市場地区は、平安時代に熊野詣が盛んになり蟻の熊野詣と言われるほど、大変な賑わいを見せ、熊野街道の宿場町として発展してきました。その時期に伊勢神宮外宮より、豊受大御神(とようけだいじんぐう)を勧請し「市場の社」が創建されました。豊受大御神は伊勢神宮の御饌(ぎょせん)の神として、食物を司る神・農業の神として信仰されてきました。稲荷さん(宇迦之御魂大神/うかのみたまのかみ)は古くから農業の神として祀られ、時代が下がって商工業が盛んになると商売繁盛の神として崇敬されるようになりました。豊受大御神と宇迦之御魂大神は古来、同一の神格と考えられることが多く、市場の社も稲荷神社と称するようになったと考えられるそうです。
毎年10月には五穀豊穣(ごこくほうじょう)を願う秋祭りがあります。宵宮と本宮の二日間にわたり例祭が行われ、本宮の午前11時より御座(おざ)が斉行(さいこう)されます。当番中と呼ばれる御座を担当する当番は毎年持ち回りで氏子の順番により15名が選ばれます。いつもはえんじ色の法被で秋祭りに参加する人々も、当番中の時は青色の法被を着て御座の準備や式を執り行います。
式は、神社祭事が宮司により斉行され、御神酒が調合されたお酒が一献から五献まで振舞われ、そして最後に順番に納杯の儀が行われます。式の間にはやぐらが宮入りをし、五穀豊穣を願い、座を盛り上げます。私も学生時代は地区の秋祭りに参加していましたが、やぐらを曳くことだけを楽しんでいたので、秋祭りは地区で大切に伝統を引き継がれて行われていることに感銘を受けました。
秋祭りだけでなく、新年の初詣や私やきょうだいの初宮参り、七五三詣りに行ったりとたくさんの思い出があり、私のこれまでの成長に市場稲荷神社は深く関わっていて、とても大切な場所ということに気づきました。
少し大げさかもしれませんが、今日まで健康に過ごせたのはきっと市場稲荷神社に守られてきたからかもしれません。これからはより一層、市場稲荷神社を大切にしていきたいと思います。
(文責Y.M)
【参考文献】
市場の歴史を残す会 会報
市場秋祭りやぐらの記憶