Vol.1  アナゴ・レボリューション

 「タコうまいでぇ~」「安くしとくでぇ~」と威勢のいい声が響く、泉南市岡田浦漁港の日曜青空朝市。早朝6時半から開催される朝市には新鮮で安い魚を求めて市内外から客がやってくる。併設されるイートインコーナーも大人気で、早くも海鮮丼などは売り切れのようだ。

 ここ岡田浦漁港で水揚げされるタコやアナゴは有名だ。中でもアナゴは大阪府内で漁獲高一番になる。しかしこのアナゴの漁獲高はこの10年で激減した。水温や水質の変化で10年前には140トンあったアナゴの漁獲高は今や5分の1の25トンになった。

 この度、激減するアナゴの保全・再生と併せ、水産業の振興と観光資源への活用による泉南市全域の活性化を図るため、岡田浦漁業協同組合・近畿大学水産研究所・泉南市がタッグを組みアナゴの養殖に取り組むプロジェクトが始動したのだ。

1603_ANAGO01 去る3月6日、岡田漁港で養殖プロジェクトのキックオフセレモニーが開催された。
今回、授与された近大アナゴは20kg、約100匹。殺菌・温度管理を調整できる10基の養殖用の水槽が用意され、近畿大学の養殖技術の指導で、餌などを工夫しながら稚魚からアナゴの養殖を進めるという。

 セレモニーでは、アナゴの授与式や近大アナゴの蒲焼き試食会、大阪調理製菓専門学校が考案した中華風アナゴバーガーの試食があり、会場はアナゴづくしとなり来場者を楽しませた。

 会場では漁協の漁師が手際よくアナゴをさばき炭火で焼いていく。その漁師が思わず「なんじゃ、この脂は!」と漏らすほど、アナゴから出る脂の量が半端ではない。1603_ANAGO02

 実際に蒲焼きをいただくと、肉厚で脂がたっぷりのったアナゴが印象的だ。地元で生まれ育ちアナゴに幼い頃から親しんできた私だが、今まで食したことがないアナゴに驚きを隠せなかった。これは美味い。

 養殖が成功すれば、安定した漁獲量で市場に出回る。泉南地区では秋祭りに古くから食される押し寿司でアナゴが使われ、郷土料理の認知にも一役買うかもしれない。

 稚魚から成魚に育つまで6~7か月かかるという。岡田漁港で養殖されたアナゴが食卓に並ぶのが待ち遠しい。
 あの養殖マグロで一躍有名になった“近大”に泉南の活性を期待したいところだ。

(取材協力 岡田浦漁業協同組合)
(文・写真 河村直樹)