Vol.4 ようこそ空美ちゃん~KIXフォトクルージング~

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 夏の太陽に照らされ、有名建築家がデザインした旅客ターミナルビルを背景に勢いよく世界へ飛び立つ飛行機。空港島内の展望ホールからは見ることができない関西空港らしい光景を泉南市の海岸線から眺めることができる。空港開港時からこの光景を見てきた私はいつかこの関西空港らしい光景を多くの方に見てもらいカメラに収めてもらいたい、そう思って止まなかった。

 泉南市観光協会のメンバーとなり、地域の素材を活用した企画作りに頭を悩ませていると、以前から抱いてきた思いと重なった。泉南市には関西空港という素材がある。すぐに企画を練り始めた。

 単にマーブルビーチから飛行機を撮影するだけでは物足りない。もっと空港の近くで撮影する方法はないか。ふと海に目をやると岡田浦漁港から出港した漁船が見えた。

 「これを使うしかない!」

 ユニークな企画に漁港関係者もすぐに快諾。とんとん拍子にイベントの企画が進んだ。

 下見で実際に漁船へ乗船し撮影スポットを探る。漁船ゆえ少々揺れはあるがその分小回りが利く。理解ある漁船の船長は、撮影のベストポイントへ案内してくれる。空港島までより近づき迫力ある写真をカメラに収めたいが、そこは泉南の海を知り尽くした男達から待ったがかかる。あまり近づきすぎると空港島の護岸が邪魔になり逆に飛行機が見づらくなるのだという。幾度かの下見で旅客ターミナルビル(管制塔付近)の沖合と、主に着陸用に使われるB滑走路端を停泊地点と定めた。また、出港は順光と離発着のピーク時間が重なる10時台にセット。

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 そして2013年から、飛行機大好き女子“空美(そらみ)ちゃん”に対象を絞った「KIXフォトクルージング」がスタートした。大阪府内はもちろん全国各地からの参加者が泉南市に集まった。翌年からは人気航空写真家を講師に招き、カメラメーカーの協力を得てカメラ機材レンタルが実施でき、飛行機撮影初心者の方も気軽に参加できるように内容を工夫した。

 いつもは魚を追う厳しい目をしている漁船の船長は、この日だけは女性ばかりの乗船とあってか、極力揺れずに撮影ベストスポットへ案内してくれる。その気遣いが嬉しい。岡田浦漁港を出港した漁船から大きな望遠レンズを付けたカメラのファインダーを覗く女性達が一途に飛行機を追いかける。普段撮影できないアングルでシャッターを切った1枚は毎年プロ顔負けの素晴らしい作品となっている。

 私のお気に入りの光景を満足していただけていると思うと嬉しい限りだ。

 今年の「KIXフォトクルージング」は9月22日(木・祝)に開催する。募集開始は8月1日(月)から。企画担当チームが唯一頭を悩ませているのは当日の天候だ。過去、天候には恵まれ、風も穏やかで撮影日和が続いた。遠くから来ていただける空美ちゃんのために、今年も開催日まで“てるてる坊主作り”が続く・・・。

 (文・写真 河村直樹)

 

 

 

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