Vol.11  地域を知る、ここだけの民旅(みんたび)

 自らが住むエリアの素晴らしさを体感してもらいたい。泉南市新家(しんげ)にお住まいの方から発案で、超ローカルな地域再発見のウォーキングに参加した。JR阪和線・新家駅から周辺を約3時間に渡ってスポットを巡るウォーキング。いつもは車で通過するだけの場所や、訪れることがなかった場所を堪能できるまち歩きに意気揚々と出発した。

 今回は泉南市観光協会の公式イベントではなく、希望者数名が集ってのウォーキングだ。泉南案内人の会のガイドは、個人の依頼でも同行し各スポットで案内してくれるのがありがたい。

 今や新興住宅地が多く立ち並ぶ新家地区だが、かつては清明寺や種河神社などの寺社と村人達が密接して暮らしていた様子がうかがえるエリアだ。なぜこの寺社がここに存在するのか、どのような意味を持っているのか。まるでぶらり歩きの某番組のようなストーリー展開が興味深い。

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 ゆっくり見たことがなかった種河神社前に建つたまねぎ顕彰の碑は、泉州たまねぎをオーストラリアに輸出する流通ルートを確立した森本徳松氏の功績を称えた碑だ。かつて新家地区が泉州玉ねぎで世界と繋がっていたことは驚きだ。

 ウォーキング途中、道端にある野菜スタンドの“田舎らしい”ほのぼのとした旅情を感じさせてくれるのも地元ウォーキングのよさだ。

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 今回のようなウォーキングは、旅行会社のツアーには決して登場しない超ローカル旅だ。いわゆる「着地型観光」の一つと言える。近年、超ローカル旅が人気で今や旅慣れた旅行者はありきたりの観光名所や寺社仏閣では満足できず、より地域性が溢れるものに志向が向いてきている。

 また「モノ消費」から、時間を費やして何かを得ようとする「コト消費」へと旅行者意識がシフトしている。

 そういう背景から、メディアでよく目にする「民泊」の旅行版である「民旅(みんたび)」という言葉が、これからの地域観光において流行の兆しがあるようだ。

 「民旅」とは個人が個人を案内する個人型旅行企画と説明するのがいいだろうか。先入観を取っ払い、視点を変えて旅行者に地域ならではの体験をしてもらい、知られざる観光資源を掘り起こすというのが民旅の定義だ。ニッチさが売り物で、地域の特色を活かしたニッチ部分をより追及していくことでツアーとしての可能性は無限大に広がる。そして地域を知ってもらうことが、必然的に地域の価値を高める。

 もしかして、すぐそこに“ここだけのツアー”が潜んでいるかもしれない。そう思うと住んでいる街にもまだまだ魅力が発掘できそうだ。

(文・写真 河村直樹)

 

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